正直申せば、結構文学部だったわりにいままで小説とか読んでも
そこまでピンときたことがない。
どちらかといえば書かれた作品そのものよりもそれを書いた
「書き手自身または彼らのバッググラウンドや思想、当時の歴史的背景」
に対する興味のほうが深い、それというのもおそらく架空の物語よりも
実在の人間のあゆんだ軌跡や歴史、しいては伝記そのものを
好みがちなためであるのは前どっかで書いた気がするが、、
たぶんこの手の嗜好傾向をもつきっかけとなったのは
小さい頃家にあったエジソン、リンカーン、ノーベル、ナイチンゲール、
ベートーベン、ライト兄弟その他もろもろの海外の偉人系伝記マンガを読むのが
大好きだったのと無関係ではなかろう。
いかなる分野でも後世に名を残している人物というのが
一体どういった環境で人生を歩んできたか、過程や事実に興味を抱かずにおれない。
そして当時家にあったそれらの伝記マンガの主人公が
なぜかことごとく「西洋人」だったことは後の私の夫選びや興味分野、
人格形成に大きく影をおとしている・・・
仮に当時毛沢東とか始皇帝の伝記ばかり読んでたなら今の私はなかっただろう。
だからもしもこれを読んでる子育て中の親のひとたちがいるならば、
子供に読ませる本は心と願いを込めて選ぶことをおすすめしたい。
いずれにせよクリミア戦争とか、エリーゼのためにとか、
モールス信号でプロポーズとか、、、何十年も前の記憶は断片的にではあるけど
いまだ脳裏に鮮烈に刻まれているのだから。
さて、そんな流れで
つくった「音楽」よりも「存在そのもの」が私の中でカリスマすぎてスターな存在
ニルヴァーナのカート・コバーンKurt Cobain
数日前カートの伝記を突然ものすごく読まなくちゃいけない気分になって
毎晩夜更かししながらはまり読みしました。おかげでだいぶ睡眠不足。
※伝記主題選びはいつでもその時の直感でチョイス
それにしてもいくら自殺したからって
「病んだ魂」とはカートに対してやや失敬なタイトルなのでは・・
というのがこの本を選んだきっかけなのですが、
読めば「病んでいる感」はビシバシ伝わってくる、というか
確実に苦しくて苦しくてしかたなくなる!
カート・コバーンの人生はなんてみごとに苦しいんだろう!
しばしば原因不明の慢性的な胃痛に苦しみ、ほかにも気管支炎、背骨の病気、
たびかさなる嘔吐、肉体的精神的苦痛を緩和するために溺れていくドラッグのこと、
一瞬もリラックスしたり、心休まる時を持てない疲れ切った肉体におおわれた魂
いまから考えたらむしろこんなに絶え間ない苦痛と闇を抱えながら
それでもよく27歳までもったなあとおもう。
性格的に元々底なしに暗い資質は多分にあったのだろうけども
両親の離婚で深く傷つき、怒り、疎外感を感じたことをかわきりに
そこからどんどん虚無と絶望感あふれるキャラが形成され
そこそこ長い期間下層階級特有のどん底生活を経験するも
それでも生まれながらに大きな使命をもった人間なのでしょう、
「ニヒルでシャイで世捨て人の男」
にもかかわらず才能と運命がいちおうはカートを
「物質的に」いいとこまで導いてくれます。
念願の音楽で成功をおさめ
奥さんコートニー・ラブと娘フランシス・ビーン・コバーンにも恵まれ
ひととおり彼なりに
ふつうの幸せ
を手に入れたかにみえましたが
それでも人生を最後まで完遂する助けにはならなかった。
「睡眠がカートの一番の時間つぶしとなった。彼は今でも時々、眠り病だと言って、
いつ睡魔に襲われてもいいようにパジャマ姿でいる。
『痛みから逃れるために眠るんだ。寝ている間は胃が痛まない。そして目が覚めると
クソッ、まだ生きてたのか、と自分を呪うんだよ』とカートは説明する。」
ハワイでコートニーと結婚する時も
その理由からパジャマで出席。わお。
「世間の常識クソくらえ!」みたいなスタイル、カッコイイです。
なにかとスキャンダラスっぽく見えるので
だいぶバッシングにあった女房コートニー
本を読むと悪気なくても非常に誤解をまねきやすいキャラだというのがよくわかります。
※コートニーも職業ミュージシャン
「嘘や中傷で家族を傷つける連中を喜んで見過ごせるわけがないだろ。そんなこと
される理由はないんだから。誰だってそうさ。僕が知る限り、ロックの歴史の中で
僕らほどスケープゴートにされた人はいないと思う。
みんな僕らをいじめて、汚して、嘘ばかりつく。わからないよ。
これまでスキャンダルを起こそうとしたことなんてないのにさ。
不必要に攻撃されると、僕はそいつらを殴り殺したくなるんだよ。」
よくカートの名声や金を利用した、と悪くいわれるコートニーですが
むしろオッカサンのように
カートを保護してた説
私の姪はカートのこれによく似たサングラスをかけている。
※彼女はニルヴァーナファンではない
「身長5フィート7インチ(170㎝)、体重125ポンド(57kg)のカートは痛々しいほど細かった。
もう少し存在感をつけようとするかのように、彼はいつもボロボロのジーンズと
カーディガンの下に何枚もの服を着た」
精神的に、私にとってカート・コバーンという人はある種のファッションアイコンでもある。
どんなにお金をもっててもあえて古いおんぼろの服を好き好んでいつまでも着倒す、
みたいなのがすごく憧れで、私がいい大人になってもいまだ
「ぼろい格好」や「なんとなしグランジ根性」みたいなのを好むのは単に
ぼろい服しかもってないんでなく8割ばかりカートの影響です。
あとの2割は純粋にボロ着やすいから好き。
ボロ・フォーエバー Boro Forever
嫁コートニーと娘フランシス
カート亡きあと、娘も無事成長しコートニーも年をとり、
最近ではコートニーのお直し過剰でミッキー・ロークみたいになった
きわどい顔やボディの写真がたまに欧米ゴシップ誌をにぎわす。
「カートの親しい友人やファンの間には、暗黙の了解があった。
カートはこの世界に長くはいないだろうと。」
先日、フランスで見たカート・コバーンのドキュメンタリーの最後のほうで
カートの知り合いが言ってたこと
うろおぼえですがこんなかんじだったと記憶しています。
「自殺を選ぶのは個人の自由だけど、命を絶つという選択肢しかないほどに
彼の絶望が深かったことがやりきれない」
この「やりきれなさ」がカートの伝説が伝説でありつづける所以なんでなかろうか。
そんなわけで
またひさしぶりに
smells like teen spirit を聞きたくなるしかないでしょう。
カート・コバーン
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